FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?

FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?

最終更新日: 2020年08月06日

FX初心者の方々から「日本で地震発生時、為替はどのように動きますか?」や「日本で災害が起きるとなぜ円高に動くのですか?」または「災害時のトレードにはコツがありますか?」と言った質問を頻繁にお受けします。

そうした質問が多い理由として、日本が地震・台風それに地滑り・洪水など世界を見渡しても「これほど災害の多い国は他には無い!」と言えるほど災害が多い国ですので、必然的に、日ごろから危機意識が鍛えられているのだと思います。

そこでここでは、そんな初心者トレーダーの疑問に答える意味も込めて、「日本で災害が発生した場合、なぜ為替相場(FXマーケット)は円高に動きやすいのか?」と言う根本となる理由と、「災害発生時にはどのようにトレードを組み立てていくと利益が出やすいのか?」と言うお話をしてみたいと思います。
※ 災害発生時には『まずは身を守ることが何よりも1番大切である』と言うことを深くご理解して頂けた上でお読みください

リパトリエーション(リパトリ)の動きとは?

災害の中でも咲く一凛の花

震災に限らず、日本で災害が起こった後にマーケットが円高に振れると、突然、頻繁に使われるようになる「リパトリエーション(リパトリ)」と言うマーケット用語があるのですが、この「リパトリエーション」と言う言葉について一体どのような意味で使われるのかご存知でしょうか?
※ 中にはレパトリエーション(レパトリ)と言う表現をする場合もありますが英語では「Repatriation」と書きますので、本サイトにおいては英語発音に近い「リパトリエーション(リパトリ)」を採用しております

リパトリエーション(本国送還)イメージ

そもそも「リパトリエーション(Repatriation)」は英語で「本国送還、帰還」と言う意味で、海外生活時の資産を引き払って帰国することになった「引揚者」と言う意味もあります。

英語では「本国送還」と言う意味を持つリパトリエーションですが、マーケット用語でも同様に「海外に持っている資産を日本(本国)へと戻す(帰還させる)」と言う意味で使用し、「企業や投資家、金融機関それに保険会社などが海外に持っている株や債券を売り払い日本円へと変換すること」を指します。

例えば、「保険会社(A)」がアメリカの「大手企業(B)」の株を大量に持つことにより資産運用をし、その利益により保険会社が運営されている場合、「保険会社(A)」が「大手企業(B)」の株を売り払い、「大手企業(B)の株 ⇒ アメリカドル ⇒ 日本円」と、日本円にまで資産を戻すことを「リパトリエーション」と言います。

大筋の「リパトリエーション」についての知識はこんなところで十分ですね。

さて、ここからがトレーダーとして重要な知識となってくるのですが、「“保険会社が海外で運用している資産を売り払い日本円にまで資産を戻す必要がある時”、つまり“リパトリエーションをする必要がある時”と言うには一体どのような時だと思いますか?」

答えは簡単ですね。そうです。「保険料の支払いがある場合です」

保険会社は、保険加入者である私たちから保険料を受け取り、その集めた保険料を投資・運用資金として利用し利益を生み出すことで、高額な保険料の支払いを行った場合においても企業として儲けが出る仕組みを作っています。

つまり、保険会社に掛けている保険金と言うのは、保険会社により「日本の株や債券、または海外通貨・海外企業の株や国債」と言った様々な資産へと投資が行われており、災害のような大規模な保険料支払いが予想されるケースにおいては、投資中の資産を現金化(日本円化)する「リパトリエーション」が起こる(起こりやすい)と言われています。

そして、この保険会社を代表とした本邦企業によるリパトリエーションの動きこそ、「日本での大規模災害発生時に円高に動く理由」だと言われています。

地震後の円買いは日本に起きる不思議な売買?

「リパトリエーションの動きが日本での災害発生時に大きな影響を与えている」と言うことについてご理解頂けたところで、続いては、多くの方が疑問に思うことについて回答させて頂きたいと思います。

それは、「本当にリパトリエーションの動きで震災後には円高になるの?」「日本での災害発生が意味するのは日本の経済が不安定になることを意味するから、日本円も売られて当然じゃないの?」と言った疑問です。

正直、このような災害時における円高の動きに関する質問を、私は、身近な友人はもちろんのこと、ビジネス先の知り合いの知り合いから、散髪にたまたま居合わせた個人投資家の方まで、老若男女、幅広い業種の方々から幾度と無くお受けしました。

まずは、「FXは論より証拠」と言うこともありますし、過去30年間の実際の米ドル円の値動きをチャートで見てみましょう。

阪神大震災・東日本大震災時の長期ドル円チャート

日本は数多くの災害を経験していますが、その中でも代表的な大きな地震災害となったのは「阪神大震災」と「東日本大震災」でしょう。

実は、こうして30年の長い期間を切り取ったドル円の値動きを見てみると、阪神大震災が発生した1995年につけたドル円の最安値(円を主に見ると円最高値)を破ったのは、東日本大震災が発生した2011年となります。

アナリストの中には「日本はデフレ状況にあったのだから、円高方向に動いていたのは当然のことで、ドル円の最安値更新は震災がたまたまそれに重なっただけの偶然である」と言う発言をする方もいらっしゃいますが、こうして見ると偶然にしては出来過ぎている気もします。

そこで、もう少し分かりやすくするために表示期間を短期にして、再度、震災時のチャートを見直してみましょう。

阪神大震災時のドル円チャート

上は、阪神大震災時のドル円チャートになりますが、震災発生後にドル円は一気に下方向(円高方向)へと舵を切り、史上最安値を更新した後、下値を探った後に大上昇を見せています。

東日本大震災時のドル円チャート

次に、東日本大震災時のチャートですが、こちらもまた震災発生後に史上最安値を更新した後、何度か底値を探った後で上昇トレンドが発生しています。

ドル円のように非常に取引人数の多い通貨ペアにおいて「史上最安値や史上最高値を更新する」と言うことは、今のようにコンピュータ制御が入っているマーケット環境では、瞬間的な戻りを狙った膨大な売買(下げたら下げた分を戻そうとする売買)が発生するので、“よほどの事”が無ければ更新は不可能と言うのが現実です。

そのようなマーケット環境の中で史上最安値更新へと傾いたのは、やはり震災が“よほどの事”で有ったと言うことと、「人々のマインドに対して強い影響を与えたから」と言わざるを得ないように思えます。

しかしながら、「震災が無ければ最安値更新は無かったのか?」と言った議論は、コロンブスの卵のように永遠に続きますので、最安値や最高値については深く意識せず、「災害(震災)と円は何かしらの関係がある」と言う風に考えておくと、いざという時に臨機応変な対応が行えるかと思います。

震災時のトレードとトレーダーの防御本能

ここまでの解説を読んで「そっか、日本で災害が起きれば円高で良いんだな!!」と思われる方も多いと思いますが、この考えを持たれた方は、高い確率で災害時の相場に押し潰されてしまうことになるので要注意です。

と言うのは、この記事を書き上げるに当たり、「地震と円相場」に関して書かれている本や記事、それにコラムなども幾つか読んだのですが、全部、「リアルタイムで本当にマーケットを見ていたのか?」と言うような軽い投資論、つまり「日本での地震=円高」と言う締めくくりになっています。

しかしながら、それは「日本が特殊な条件を持った国だから」で、他の国であれば、先の質問に有ったように「災害の発生=災害発生国通貨・株の売り」で反応するのがマーケットとしては自然な流れとなります。
 ※ 日本以外の国で地震が発生した場合、一般的に「その国の通貨は売りで反応する傾向」があります

その反応は「トレーダーとしての直感的な防御反応」とも言え、それは東日本大震災時においても例外では無く、地震発生のニュースが流れた瞬間ドル円相場は一気に「円売り方向」での反応を見せました。

つまり、中途半端な災害時のマーケットについての意識を植え付けられてしまい、「地震発生直後に円買い」をしようものなら、トレーダーの反射行動による膨大な円売りにより発生した円安方向の波に全て絡めとられてしまうことになるでしょう。

円買いの動きが起きたのは、第一報のパニック発生後に情報分析を行い始め、「リパトリエーションの動きが意識されてから」と言うことになるので気を付けて頂きたいと思います。ただし、大きな災害が連続して起こる場合(震災後の大規模な余震等)には、マーケットは既に学習しているので「即円買い」で反応することは意識しておきたい点です。

本当の円買いはリパトリに絡む投機筋の動きが原因

それでは災害と円相場の関係について、最後に、他ではなかなか聞くことのできない「トレーダーにも余り知られていない災害時に円高に振れる本当の理由」をお話してみたいと思います。

日本で震災が起きれば円買い」と聞くと、先ほどから何度も登場した「リパトリエーション」の話題になりがちなのですが、東日本大震災のような大規模な災害が発生したにも関わらず、実際は、「震災要因となる海外資産の売却からの円買いの動き」と言うのは、ほとんど起こりませんでした。

震災とトレーダーと義捐金のイメージ

あれほどの大規模な災害であったにも関わらず、なぜリパトリエーションの動きは発生しなかったのでしょう?それには日本企業の大きさが影響しています。

そもそも日本の保険会社と言うのは、世界を見ても大規模であり莫大な資産を運用しているのですが、基本的に海外投資は高利回りとなる一方でリスクが高いことから運用比率は小さめに設定されており、今回の震災時の保険料支払いに関しても主だった海外資産の売却を行う必要無く、国内資産だけで十分に賄うことができました。
 ※ そもそも生命保険は「自然災害による死亡は免責条項」だったりします(東日本大震災時は特別対応)

それでは、なぜリパトリの動きが円高を生んだと言うのでしょう?

実は、震災の裏側では海外投資家による「日本の株買いの動き」と言うものが非常に密接に関係しており、災害時に彼らがとる行動こそが「円高に動く最大の要因」と言う見方があります。

日本の株式相場は、日本で震災や災害が発生すると円相場が円売りで反応していても、その動きを全く無視するかのようにして「売り一辺倒」の動きを見せます。

そんな中、海外投資家もまた、防御本能から持ち株を売りたい訳ですが、あの早いマーケットの中で持ち株を全て売りきるのは至難の業ですし、逆に売りきってしまっても残るのは大きな負債だけです。

そこで、投資家の中には「持ち株を売り払わずに下がっていくマーケットに耐えよう」と言う考えが生まれ始めるのですが、彼らの多くは高いレバレッジを掛けたトレードを行っているため、「証拠金としての日本円」がどうしても必要になります。

そうです。この自分の持ち株を守るために必要だった証拠金の日本円こそが、「震災時に円買いで動く」と言う事実と深い関わりがあるのです。

株が下がれば下がるほど証拠金としての円が必要になり、海外勢は更なる「円買い」を起こすようになり、震災後は加速度的に下げていく株式相場に呼応するように円が買い進められます。

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そして、史上最高値が射程距離へと入った時、投機筋は「リパトリエーション」と言うキーワードを大々的に掲げ、一気にストップを巻き込む取引(仕掛け)を行います(東日本大震災の時は、日本のFX会社のメンテナンス時間を狙ってのストップ狩りトレードが行われました、通称:メンテアタック)。

マーケットは後で考えると「なぜ?」と思えるようなことは多くありますが、多くの場合、「トレーダーの条件反射と経験則」によって左右され、特に、阪神大震災時に最安値を攻略したイメージが東日本大震災時に引き継がれたところも大いに影響を与え、円高方向への動きを作っていくことになりました。

震災後は、「トレーダーは日本の一大事まで金にするのか!?」と言う罵倒を受けることもありますが、日本の一大事にも関わらず、冷静沈着に行動し、日本の資産を守りきったのもまたトレーダーです。日本に災害が発生している中でトレードをしていても胸を張っていてください。

そして、震災後にこの記事が切っ掛けになり少しでも利益を出すことができたならば、その利益のほんの一部で良いので被災地に義捐金として送って頂けるような流れとなれば、この記事を書いたトレーダーとして、そして日本人として本当に嬉しく思います。

FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?のまとめ

FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?というお話について、知らなかった方も多かったのではないでしょうか?こうした理由を理解して納得しながらトレードをすると、全く違う意気込みでトレードに臨めます!是非、心の片隅においておいてください!

FX相場は日本の地震や災害時になぜ円高に動く?のまとめ
  • 円高に振れるのはリパトリエーションと投機筋の円買い
  • 震災後直ぐに円買いをすると危険(投資家の防衛本能)
  • 震災後の株の動きが円買いを呼ぶ
  • 利益が出れば一部を義捐金とする流れを・・