年末にドル需要(買い)が出る理由と検証

年末にドル需要(買い)が出る理由と検証

最終更新日: 2020年08月06日

「相場傾向」と言うのは、経験の浅いFX初心者にとって手に入れる事が難しい知識になりますが、ここでは年末の相場傾向である「年末のドル需要」について理由と検証の結果を紹介しています。

年末には「アメリカドル(米ドル)が買われ易い」と言う話を聞いた事はあるでしょうか?ここでは以下の構成で年末のドル需要について迫っていきたいと思います。

年末にドルが買われる訳

お金を取りに行っている様子

「年末にアメリカドルが買われ易い」と言う話を聞いた事がある方も比較的に多いと思いますが、なぜ年末に近づくとアメリカドルが買われ易くなるのでしょうか?

その一番の理由として挙げられるのが、「年末に控えた企業の決算」です。

海外に進出している、または関わりのある多くの企業は、外貨による売り上げを抱えています。しかし、その外貨としての売り上げを持っている企業は、何処かで得られた売上を決算や支払いのためにドルへと両替しなければいけません。

その両替が順次消化しきれていれば良いのですが、為替の変動や国を隔ててのやり取りもある為「全ての両替がスムーズには消化される」と言う訳にはどうしてもいきません。そこで、そのように消化しきれなかった両替が、決算発表に向けて集中するため「年末にはドル買いが起きやすい」と言われています。

では、実際にドル円のチャートを使って、「年末のドル需要」がどれほど為替相場に影響しているのか検証してみたいと思います。

ドル円9月~12月の相場をハイライトしたチャート
(チャート提供:マネーパートナーズ)

上のチャートはドル円の月足チャートにハイパースピードネクストのサイクルラインを使用し期間ごとに区切ったチャートです。黄色の○が入力してある個所が10月・11月・12月のローソク足となっています。

ドル円は2007年から下降トレンドへと突入しているため、全体的に陽線(円売りドル買い)となっている赤いローソク足は多くありませんが、黄色の○印が入っている期間を見ても、陰線(円買いドル売り)が目立っているように思います。

そこで、もう少し年末の値動きを分かりやすくするために10月・11月・12月を1本のローソク足だと考え、先ほどの黄色の○印を3ヶ月の値動きが陽線ならば赤い○印を、陰線となるならば青い○印を入れてみました。

3ヵ月ベースで陽線か陰線かマークしたチャート

結果は見ての通りなのですが、6年間のデータでは陽線2本・陰線4本となり「年末ドル需要」と言うより「年末円需要」と言う結果になってしまいました。

年末のドル需要と言うのは噂話しで有って相場に全く影響していないのでしょうか?

年末相場とヘッジファンドの関係

世界にはヘッジファンドと言う投資で利益を上げている会社がありますが、実は利益を上げている海外のヘッジファンドは12月には長期休暇に入っています(ヘッジファンドについては「FX相場に大きな影響を与えるヘッジファンド」を参考にしてください)。

そこで、利益を上げていないヘッジファンド(HF)が大暴れするのが12月の相場の特徴でもあるのですが、年末である12月のみに注目してみるとどのような結果が出るでしょう?今度は12月のみの値動きに対して陽線なら赤い○印を陰線なら青い○印を入れてみました。

12月が陽線か陰線かをマークしたドル円チャート

赤い○と青い○の数がそれぞれ3つで、それぞれの確率は50%と言う事になりました。

これを「年末ドル需要が出たから」と判断するかは個々にお任せするとして、上のチャートでは下降トレンドと言う事も有り、陽線の出現確率は42%でした。

しかしながら、上のチャート以前のドル円の動きを更に見てみると、2000年より以前の相場ではドル円の12月は「ほとんどが陽線で引けている」事が分かりました。

年末ドル需要と言う言葉が標的に?

これまでの結果を考えると「年末のドル需要と言う言葉が世界的に広まっているため、それを狙った動きが有る」と言う事が分かります。

しかし、ここまでの検証結果に納得がいかない方も沢山いらっしゃると思います。それは、なぜ「ドルインデックス」を使って年末ドル需要の検証をしなかったか?と言う点だと思います。

実は今回ドル円を使ったのには理由が有って、年末のドル需要を検証しながら裏では、多くの日本企業の決算月となっている「9月の円需要」の結果も同時に検証対象としていたからです。

すると、2006年~2011年までで、2本の陽線・4本の陰線と言う結果になりました。単純確率で考えてみると66%で陰線で引ける計算になります。

つまり、9月にドル円の売り、12月に途転してのドル円の買いをベースに取引を組み立てていく事で、「勝率が少し上昇する可能性がある」と言う事になります。

今回は月足をベースにしての相場傾向の判断でしたが、この相場傾向を短期トレードに生かしてみると、相場の組み立てがやり易くなるかも知れません。

年末にドル需要(買い)が出る理由と検証のまとめ

年末にドル需要(買い)が出る理由について、ご理解頂けましたでしょうか?こうした相場の傾向を知ることはプロトレーダーへの第一歩になります。是非、覚えておいてくださいね!

年末にドル需要(買い)が出る理由と検証のまとめ
  • 「年末ドル需要」は企業決算の動きから起こる
  • 年末のドル需要は狙われている可能性
  • 9月の円需要は、チャートに出ている可能性
  • 日本企業が円高に苦しんでいる可能性を示唆
  • 9月に円買い12月にドル買いは勝率を上げる可能性を含む