為替の動きを株・国債・金相場から読む方法
最終更新日: 2020年08月02日
多くの初心者トレーダーが知らない事なのですが、実は、FX取引を行っていく上で「株・国債・金」の値動きを見て行くと、マーケットの状況判断や分析に役立つ事が沢山あります。
そこでここでは、そんな入門者の方々向けに、私のメイン通貨であるドル円を題材にした、「株・国債・金相場を利用し、取引を有利に進める方法」を紹介してみたいと思います。
「為替の動きを株・国債・金相場から読む方法」については以下の構成で紹介しています。より理解するには全文を読んで頂きたいのですが、お時間の無い方や中級者の方は必要な箇所を参考にして頂ければと思います。
為替の取引でなぜ他の相場を見るのか?
FXを始めようと考えている方々から、「FXがしたいだけなのに、なぜ株式相場や他の相場まで見ておかなければいけないのですか?」と言った質問を受ける事は良く有ります。
そう言った場合に常に私は次のように答えています。
『世界は繋がっているから(We are the world)』
少し格好を付けてしまったので(笑)、もう少し具体的に掘り下げて紹介していくと、例えば、ある人が「アメリカに旅行に行こう」と考えたが、金(ゴールド)は持っているけれど旅行に十分なお金を持っていなかったとします。
すると、その人は旅行費用捻出のために、「金を売り日本円を取得しようとしますよね?」そして、その金を売って手に入れた日本円を銀行へと持ち込み、さらに日本円の一部をアメリカドルへと事前に両替し旅行へと出かけて行くでしょう。
これは、一般の旅行客でも十分に有り得るシチュエーションの話ですが、もしも、この金を売り日本円を手に入れ、さらに米ドルへと両替した人物が超大金持ちだったらどうでしょう?
そうです。もちろん金を売った量にもよりますが、大量に売られた場合にマーケットは、この人物の取った行動により大きく揺れ動く事になります。
つまり、金を売った行動を起点として米ドルを買う行動まで繋がる事になります。
しかし、実際のマーケットでは1人の大きな売買により、そこまで大きな値動きを見せる事は中々無い訳ですが、もしも、「多くの人が金を売り米ドルを買う」と言う行動を起しやすい材料があればどうでしょう?
もう「為替の取引でなぜ他の相場を見るのか?」について御理解頂けたのでは無いでしょうか。
それでは、FXを有利にするための、株・国債・金相場と通貨の関係性について、具体的な動きについて紹介してみたいと思います。
金相場と米ドルの相関関係
通貨と他の相場の関係性について語る上でまずは、金相場と米ドル(アメリカドル)との関係性からご覧いただきたいと思います。
まずは、以下の金相場からです。
金相場5日間チャート
上は、週末に金相場の5日間の値動きを示したチャートですが、その同期間の値動きを示す以下のチャートと比較してみてください。
ドルインデックス5日間チャート
既にお気付きになられたかと思いますが、上の金チャートと下のチャートが反対の動きをしています。
実は、下のドルインデックスチャートと言うのは、アメリカドルの各通貨における値動きを指数化したもので、“アメリカドルそのもの”の値動きを示したチャートになります。
この2つのチャートは、次のようなアイデアが導き出せます。
- 金が買われれば米ドルが売られる
- 金が売られれば米ドルが買われる
- 米ドルが買われれば金が売られる
- 米ドルが売られれば金が買われる
これは、金相場と通貨の関係における最も基本的で大切な値動きとなるのですが、金が買われる時と言うのはドルを売り金を購入するため米ドル売りが、金が売られる時と言うのは金を売って米ドルに変える事になるので、上のような値動きをしやすくなります。
また、リスクオフと呼ばれるマーケット全体が経済失速等の不安を抱えている状況においては、金・米ドル共に購入される動きとなりますが、状況悪化が進むと、古代エジプト王朝時代から高い価値を持ち、地球全体での埋蔵量が決まっている金は「世界の不変資産」と考えられ、米ドルよりも金買いが進むケースが散見されます。
株価とドル円の関係
続いて、「株式相場からドル円相場の値動きを知る事ができる」その関係性について解説をしていきたいと思うのですが、まずは日本の株とアメリカの株との関係から見ていきたいと思います。
以下は、日本の主要株の平均相場を表す「日経平均株価」と呼ばれる株価の推移を示したチャートです。
日経平均株価5年間チャート
上のチャートを見て頂けると分かるように、2012年後半から通称「アベノミクス」と呼ばれる日本の経済政策により、日本の平均株価が大きく上昇傾向となった事が分かって頂けるかと思います。
続いて、次の日経平均株価をベースにして作成した以下のチャートをご覧ください。
日経平均株価+ダウ工業株30種平均5年間チャート
上のチャートは、先ほどの日経平均株価にアメリカの平均株価として代表的な「ダウ工業株30種平均」の値動きを加えたものです。
緑色のダウ平均の価格推移を示したラインと、青色で示された日経平均の価格推移を示したラインは一見全く違う値動きをしているように感じられるかも知れませんが、ポイントは緑色のライン(ダウ平均)が下がるポイントに注目して再度上のチャートを見てみてください。
すると、どうでしょう?ダウが崩れるタイミングで日本株も崩れている事にお気付きになられたかと思います。
これは、アメリカに対して大きな輸出を行っている日本を反映するような値動きで、アメリカ経済の失速による影響は、日本の企業にも大きく影響を与えると考えられるため起こりやすい値動きとなります。
つまり、以下のような値動きの関係性を頭に入れておく事になります。
- ・ 米株が売られれば日本株も売られる
また、米株と日本株が全体的に違ったような動きをしているように見える理由として、やはり株は「各国の政策や情勢による影響を受けやすい」と言う特徴を持っているためで、上のチャートで両国の株価上昇に差が見られているのは「量的緩和を行ったタイミングの差が出ている」と言う見方もできます。
日経平均株価5年間チャート
続いて、再度先ほどの日経平均株価チャートと、下のチャートを比較してみてください。
ドル円5年間チャート
上は、ドル円を先に紹介している日経平均株価と同期間で示したチャートになります。
この2つのチャートを比較して見て頂けるとお分かりになられるように、2012以降の上下2つのチャートの連動性はかなり高くなっている事にお気付きになられるかと思います。
基本的に日本株と言うのは、これまで日本人投資家による取引が主となり運用されるものでしたが、ここ数年、外国人投資家による投資額の割合が激増したことにより、日本株だけでなく為替相場にも大きな影響を与えるようになってきました。
そのため、為替相場、並びに株式相場の上昇下降は、お互いがお互いに対して影響を与えるようになり、双方からの動きに対して関連性が見て取れるようになりました。
- 日本株が買われればドル円は買われる
- 日本株が売られればドル円は売られる
- ドル円は買われば日本株は買われる
- ドル円は売られれば日本株は売られる
また、日本株と日本円の関係性について詳しく知りたい方は下のページで更に詳しく紹介しているので、もっと深く学びたい方は以下を参考にしてください。
米国債とドル円相場の関係
最後は米国債(利回り)の動きと、ドル円の関係について紹介してみたいと思います。
この2つの関連性について、多くの初心者トレーダーは全く意識することなく取引をしているようですが、実は、意識する事でドル円の取引に大きな参考材料をもたらす事になります。
それでは以下の2つのチャートを比較してみてください。
米国債(10年)利回り5年間チャート
上は米10年国債の利回りの推移ですが、価格の推移では無いので勘違いされないよう注意をしてください(※ 利回り上昇⇒価格低下:利回り下降⇒価格上昇)。
ドル円5年間チャート
上の2つのチャートを見て頂けると、完全に一致と言う訳には行きませんが全体的に流れは同じように推移している事にお気付きになられたのでは無いでしょうか?
実は、米国債と日本国債の利回り差と言うのが意識され、ドル円の動きに影響を与えると言う事は非常に良く有ることで、特にマーケットに売買材料が無い時には特に意識される関連性となります。
それは、アメリカと日本の国債金利差を元にスワップポイントが決められるためで、スワップポイント・マイナススワップポイントの拡大・縮小がマーケットに影響を与える訳です。
また、米国債が先行的に動き、為替マーケットや株式マーケットが追いかけるケースも散見されるので、「なぜ突然ドル円相場が落ちたんだろう?」と言った時に米国債が先行的に動いているケースも有り現状把握には非常に重宝します。
為替の動きを株・国債・金相場から読む方法のまとめ
これまでの「為替の動きを株・国債・金相場から読む方法」のまとめです。
上昇 | 下降 | リスクオン | リスクオフ | |
---|---|---|---|---|
米国株 (ダウ) |
日本株買い | 日本株売り | 買い | 売り |
日本株 (日経平均株価) |
円売り | 円買い | 買い | 売り |
米国債 (利回り) |
ドル円買い | ドル円売り | 売り 利回り上昇 |
買い 利回り下降 |
金相場 | 米ドル売り | 米ドル買い | 売り | 買い |
上の表は、リスクオン・オフについても紹介していますが、その考え方について詳しくは、以下のページで詳しく紹介しているので、更に為替の世界へと入っていきたい方は参考にして頂ければと思います。
また、上の表から外れた動きが見られるような場合には、マーケットに対して何かしらの取引材料となるニュースが出ていたり、一部投資家や企業が集中的に売買に行っている場合や、何かしらのマーケットにズレが発生しているケースが考えられ、「その掛かったバイアスの修正を狙う」と言うのも1つの投資技術となります。
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