MACD(Moving Average Convergence Divergence)

MACD(Moving Average Convergence Divergence)

最終更新日: 2020年08月11日

MACD(Moving Average Convergence Divergence Trading Method)」は、日本語訳をすると「移動平均収束拡散手法」と言うものになります。1979年にジェラルド・アペルよっって開発され、簡単に説明すると移動平均線をベースに2本のラインの乖離を表示したテクニカル指標です。

MACDの読み方としては「マックディー」と呼ばれたり、そのまま頭文字を取り「エム・エー・シー・ディー」と呼ばれる事もありますが、一般的には「マックディー」が若干主流となっているように思えます。

売買サインとして、「MACD」と「シグナル」の「ゴールデンクロス」「デッドクロスで取引のタイミングを計る方法と、0値をベースに「上抜け」や「下抜け」を元にタイミングを計る方法が使われています。

また、MACDは逆張り指標として人気が高い事からも伺えるように、その要因として「シグナルの発生が早い、または精度が高い」と言う特徴を持っています。ベースは移動平均線となるMACDですがそのシグナルの発生する早さは、移動平均線が乖離した際のクロスと比べると雲泥の差があります。

相場の転換を逸早く知り流れに乗るためのテクニカル指標として、MACDのシグナルは初心者にとって非常に使い勝手の良いテクニカル指標となります。

◇MACDの計算式

MACDを表示したチャート

MACDの計算では単純移動平均線(MA)ではなく、指数平滑移動平均(EMA)が採用されています。

単純移動平均線(MA)と指数移動平均線(EMA)の違いは、単純移動平均線が一定期間の相場に対して平均した動きを算出するのに対して、指数移動平均線では過去の値動きよりも、現在の相場に近い値動きを重視する計算方法となっています。そのため、現在の値動きに対して反応が単純移動平均線に比べリアルタイムで反映されるので、MACDの素早いシグナルを実現しています。

MACDの算出方法は以下のようになります。

X: 当日の終値
Y: 前日の指数平滑移動平均
α(平滑化定数): 2÷(n+1)

n日間の指数平滑移動平均 = Y+α(X-Y)

次に、以下はシグナルを9日間、12日と26日の移動平均の価格差をMACDとして設定した場合の算出方法の例です。

9日間の指数平滑移動平均:9EMA
12日間の指数平滑移動平均:12EMA
26日間の指数平滑移動平均:26EMA

9日指数平滑移動平均(A) = 前日のA + (2 ÷ 10) X (当日終値 - 前日のA) 12日指数平滑移動平均(B) = 前日のB + (2 ÷ 13) X (当日終値 - 前日のB)
26日間の指数平滑移動平均(C) = 前日のC + (2 ÷ 27) X (当日終値 - 前日のC)

MACD = (B) - (C)
シグナル = (A)
MACD-hist = MACD - シグナル

※第1日目となる日の平均値については、単純平均値を使用します。

◇MACDの主な設定期間

MACDの設定期間として一番使われているのが、考案者のジェラルド・アペルにより推奨されていて、一般的なMACDの設定として初期値とされている場合の多い、
「MACD: 12日、24日 シグナル: 9日」の設定が基本となります。

その後、MACDの反応を更に上げるため、クリス・マニングにより推奨された設定が、
「MACD: 9日、17日 シグナル: 7日」となります。

投資家の中には、独自の設定を使う場合や、相場状況や取引通貨により設定を敏感にさせたり鈍感に変更をするトレーダーも多くいます。

MACDの見方

MACDは、相場の方向性が見えにくい時に、比較的に早い段階で転換点を知らせてくれるテクニカル指標となります。まずは下の(チャート1)をご覧ください。

MACDの見方画像

(チャート1:マネーパートナーズ提供)

MACDは赤色、シグナルは青色、MACDヒストグラムは緑色で表示させています。

MACDの赤色のラインが、青色のシグナルよりも相場に対して敏感に反応している事を確認してください。この反応の差がMACDのサインを生むポイントとなります。

次に、真ん中に緑の棒が見えると思いますが、これをMACDのヒストグラムと呼びます。このヒストグラムが表示されないMACDを提供している会社もありますが、このヒストグラムはMACDとシグナルがどれほど離れているか、つまり乖離の幅を表しています。

ヒストグラムが中心線の0より上向きに出ている場合には、シグナルのラインがMACDより上で推移している事を示し、反対にヒストグラムが0よりも下方向へと出ている場合にはシグナルラインがMACDよりも下方向で推移している事を示します。

そのため、「ヒストグラムが上方向に出ている場合には買いが強い」状況を示唆し、反対に「ヒストグラムが下方向へ出ている場合には売りが強い」示唆しています。

また、シグナル・MACDも同様に見る事ができ、「シグナル・MACDが0ラインより上で推移する場合には買いが強い」、反対に「シグナル・MACDが0ラインより下で推移する場合には売りが強い」と言った状態を示唆しています。

MACDの使い方

次にMACDの使い方についてです。MACDの使い方について、主に2種類の売買シグナルから相場の状態を判断していく事になります。まずは、下の(チャート2)をご覧ください。

MACDの使い方画像1

(チャート2:マネーパートナーズ提供)

上でも少し紹介しましたが、MACDの売買シグナルの王道はやはり「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」となります。

移動平均線によるゴールデンクロス、デッドクロスは、非常に有名な売買シグナルの1つですが、このMACDのクロスもまた世界中でよく使われる売買シグナルの1つです。

売買シグナルは以下の通りとなります。

  • 赤いラインのMACDが、青のシグナルを下から上方向に突き抜けるとゴールデンクロスとなり「買いサイン」
  • 赤いラインのMACDが、青のシグナルを上から下方向に突き抜けるとデッドクロスとなり「売りサイン」

このMACDの売買シグナルは、非常に早い段階からトレンドの転換を知らせてくれるものですが、次に実際の移動平均線のクロスと比べてみたいと思います。次の(チャート3)をご覧ください。

MACDの使い方画像2

(チャート3:マネーパートナーズ提供)

(チャート3)で、一般的に良く使われている単純移動平均線(MA)の25日線、50日線、75日線、を入れ、更にゴールデンクロスが起こったタイミングを黄色の○で囲んでみました。

すると、移動平均線のゴールデンクロスに比べて、圧倒的にMACDのクロスが先に発生した事が分かります。これがMACDのクロスの凄さだと言えます。

MACDの使い方画像2

(チャート4:マネーパートナーズ提供)

上の(チャート4)で黄色の○で囲んだ箇所に注目してください。これがMACDの2つ目の売買シグナルとなります。

左の黄色の○の箇所では、ゴールデンクロスをした後に、シグナル・MACDラインが0ラインを下から上に抜けています。このサインは、MACDのクロスの正確性を上げるものだと考えられています。つまり、クロスを確認後に買い取引を行ったのであれば、しばらくホールドを考えるサインとなります。

反対に、右の○においては、デッドクロスをした後で、シグナル・MACDラインが0ラインを上から下に抜けています。このサインは先ほどとは反対に、デッドクロスの正確性を高めるものだと考えられており、デッドクロスで売り取引を行ったのであれば、こちらもまたしばらくホールドを考えるサインとなります。

上級シグナルのダイバージェンス

上級シグナルと位置づけられているMACDのダイバージェンスについて紹介していきたいと思います。

macdダイバージェンス画像1

(チャート5:マネーパートナーズ提供)

ダイバージェンスとはオシレーター特有のシグナルで、「逆行現象」と呼ばれるもので、価格が下降しているのにMACDは上昇している、または価格が上昇しているのにMACDは下降している状態を指します。

ダイバージェンスは、「強いトレンドが発生してしまったためにオシレーターが起こす誤作動」と言う人もいますが、このダイバージェンスの発生は、相場の転換を示唆するものとしても使われています。

上の(チャート5)をご覧ください。MACDがデッドクロスをしてからも価格は上昇していき、MACDのシグナルが「だまし」に終わったように見えましたが、その後、しっかりとダイバージェンスが発生し相場が下降しています。

macdダイバージェンス画像1

(チャート6:マネーパートナーズ提供)

次に、ヒストグラムとのダイバージェンスです。投資家の中には、価格とMACDのヒストグラムとでダイバージェンスを探す人もいます。(チャート6)を見ると分かるように、ヒストグラムとのダイバージェンスが見事に効果を発揮している事が分かります。

ダイバージェンスの売買シグナルについて、その効果について賛否両論が分かれる分野ではありますが、MACDを使うとどうしてもクロスや0ラインに焦点を合わせてチャートを見てしまいます。しかし、ダイバージェンスを見つけるにはチャート全体の流れを見る必要があるので、自然に相場全体を見ての取引を行いやすくなります。

そう言う意味で言えば、賛否両論のダイバージェンスとなりますが、MACDにとって非常に重要なシグナルだと言えます。

MACD(Moving Average Convergence Divergence)のまとめ

MACDは、一般的なトレーダーの間でオシレーター系の指標として代表的に利用されるテクニカル指標です。ただしシグナルは、大相場になったときに大きな狂いを見せるので、ファンダメンタルズの材料によっては利用を中止するなど考えることも忘れないでください。

MACD(Moving Average Convergence Divergence)のまとめ
  • MACDは、シグナルの発生が早く精度が高い事で知られている。
  • MACDが、シグナルを下から上方向に突き抜けるとゴールデンクロスとなり「買いサイン」。
  • MACDが、シグナルを上から下方向に突き抜けるとデッドクロスとなり「売りサイン」。
  • MACD・シグナルが0ラインを下から上へと突き抜けた場合には、それより前に発生したゴールデンクロスの正確性を高める傾向にある。
  • MACD・シグナルが0ラインを上から下へと突き抜けた場合には、それより前に発生したデッドクロスの正確性を高める傾向にある。
  • ダイバージェンスは相場の転換を示唆するサイン。