ナンピンと市場に消えた3000万円

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 この話は、私の友人を通して、友人の知人である「ある方」から話を持ちかけられた事から始まります。

 ある方について、ここからは「A」とさせて頂きます。

 Aは一般的に敏腕と呼ばれる部類に属する、やり手のサラリーマンでした。給料も一般よりも十二分に貰っていたAですが、所詮サラリーマンはサラリーマンの給料だと、自分の収入に満足できずに給料を運用する事を考えたそうです。

 まずAが始めたのは、株式投資だったそうです。海外での赴任の長かったAにとって、日本と海外との貿易事情に少なくとも一般の方よりは精通していた事もあり、株から投資の世界へと入っていったそうです。

 そして、色々と取引の経験を積むうちに、アメリカの株にも手を出すようになり、さらに資産分配の必要性を感じて商品先物市場にも参加するようになったそうです。

 気が付くと資産運用の総額は3000万円を超えて、4000万円に手が届こうかと言ったところだったそうです。

 俗に言う「人生の勝ち組」と呼ばれる人物になろうとしていたのです。

 そんな時、Aは会社を辞めてしまいます。実際に株や先物で得られる利益が圧倒的にサラリーマンとしての給料を超えたからでした。Aは専業トレーダーへの道を選んだのです。

 専業のトレーダーとなったAは、サラリーマン時代と比べて余りある時間も資産運用に使おうと考え、ここでFX投資にも手を出すようになります。

 株式投資で磨いた自分のやり方なら為替の世界でも通用すると言う確固たる自信があったからだそうです。

Aの売買手法

(Aの売買手法イメージ:GMOクリック証券提供) Aの売買手法イメージ画像

 Aのその頃の売買手法を伺ったところ、非常にシンプルな取引をされていた事が分かりました。

 その手法を「両建て難平(ナンピン)手法」とでも名付けておきたいと思います。

 Aは結局ニュースや相場状況は予想や分析しても無駄だと考え、最初から売りと買いの両方で取引を行う両建てと言うやり方を取っていたそうです。

 しかし、売りと買いを同時に行うために、そのままでは待てど暮らせど全く利益は生まれません。強いて言うと取引を行えば行うほどに取引手数料を会社に支払う事になるので、取引をしない方が良いと言うのが実際です。しかし、Aは「このやり方がベストだ」と言っていました。

 具体的にどう言う取引を行うかと言うと、最初にある程度目測を付けた売買のキーとなるポイントで両建てを行い。利益が出た方だけを利益確定させるそうです。

 後は、損益が出ているものに対して豊富な資金力でナンピン(損益が出ているものに更に買いを入れる事により購入したものの平均購入価格を下げる取引方法)をを入れていき、相場が戻れば大きな利益を得られると言う手法だそうです。

 最初に、両建てを行う理由についてたずねてみたところ、Aは「売りと買いどちらも持っていないと、負けている側の気持ちが分からないから」と言っていました。

 簡単に説明すると、損失を出している方だけの立場になって相場を考え、「限界だ」と感じて損切りしてしまう箇所が利益が出ている方を利益確定させるポイントとし、そしてさらに負けている方を購入します。

 私は当時このやり方を聞いたとき、非常に理にかなってるように思えました。

 それは、一方向へとポジションを取るのが相場の基本となりますが、「自分が既に取引を行っていると、どうしても自分が持っている方向が正しい」と思ってしまう傾向にあります。そこで売り側と買い側の気持ちを理解するために、両方で取引を行い、「勝っている側の利益確定したいと考えるライン」「負けている方の限界ライン」を身を持って感じるのです。

 つまりは、勝っている側と負けている側の両側の考えを元に相場展開を追いかけているのです。

 「このやり方の何処に失敗した要因があるのか?」一見すると上手くやれば全く負けのない取引を行う事のできる夢のような手法に感じます。

 Aは私にこう言いました。「この手法使っていると1度読み間違えると地獄を見ることになりますよ」。

Aが経験した天国と地獄

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 Aは「両建て難平(ナンピン)手法」を駆使する事により、FXにおいてもコンスタンスに利益を上げる事に成功していたそうです。

 そんなある日、Aの口座を崩壊させる事件がおきます。

 その日も、普段のように両建てから取引を始め、利益が出た方は損益が出た側の立場になって考え限界だと感じたために利益確定、そしてナンピンモードへと移行していました。

 利益が出ていた方の売りを利益確定させても、その日は上手く相場が戻らなかったそうです。

 こう言う相場も始めてでは無かったので、買いでの取引を下がっていく相場に対してドンドン行ったそうです。

 損失が500万円600万円と膨らんで来ましたが、「それも許容範囲の内」と考えて、更に買い取引を行ったそうです。

 そして、損失が1000万円を超え1200万円まで膨らんだ時、はじめて「何かがおかしい」と感じたそうです。

 その「おかしい」と言うAの読みは完全に当たってしまい、ズルズルと更に損失が拡大していったそうです。

 Aは、さすがに止まらない下げに耐えかねて損失が3000万円を超えたときに震える手を抑えながら一気に全部損切りをしたそうです。

 それが、後で名前が付いたギリシャショックと呼ばれる大相場です。

 Aから色々その時状況を聞いて、様々な解決について話をしましたが、二人で話し合った結果導き出した答えは1つでした。

 「資産のある限り続けていくナンピンと言えども、何処で1回の取引に対する最大損失のラインを決めなくてはいけない。」「損切りは長い目で見ると必要不可欠だ」と言う内容でした。

 この話を聞いた時に私が思ったのは、ジョージ・ソロス氏の言葉です。

 「まず生き残れ。儲けるのはそれからだ。

Aの失敗したまとめ

 Aの失敗から学べる事をまとめてみました。

  • 資産のある限り続けていくナンピンと言えども、何処で1回の取引に対する最大損失のラインを決めなくてはいけない。
  • 損切りは長い目で見ると必要不可欠だ。
  • まず生き残れ。儲けるのはそれからだ。(ジョージ・ソロス)

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