相場の格言と消えたお金

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 この話は実際に私が経験したFX取引による数ある失敗談の内の1つとなりますが、この出来事が起こった全ての発端はフラッと立ち寄った書店で購入した一冊の本との出会いから始まります。

 毎日のFX取引に追われていた私は、「たまには息抜きも必要だろう」と言う友人の誘いもあり、週末に1人、友人と会うために市内へと出かけました。久しぶりの電車と言う事もありましたが、日常のトレード生活では常に情報が飛び交う中での取引を送っていた私にとって、電車での移動時間はどうしても「無駄な時間」に感じられて仕方ありませんでした。

 そこで、私は電車の乗り換えを行う時に、書店へと入り適当に積んであった本の中から一冊の為替関係について書かれてある雑誌を手にしました。

 この時、何気なく購入したこの一冊の雑誌が、私に大きな損を与えるとは全く気がつきもしませんでした。

 その雑誌に書かれていたものが、忘れもしない次の文章です。

 「市場は常に間違っている」というのは私の強い信念である

「市場は常に間違っている」というのは私の強い信念である

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 「市場は常に間違っている」というのは私の強い信念である。(ジョージ・ソロス)
When I asserted that “markets are always biased” I was giving expression to a deeply felt attitude. (The Alchemy of Finance)

 この余りにも有名な相場の格言に出会ったのは、もちろんこの時が最初では無かったのですが、暇な電車の時間、私はこの格言の意味を1人で考えていました。

 そもそも、ジョージ・ソロス氏は、1992年にイギリス政府の為替介入に対抗してイギリスの通貨ポンドへ空売りを行い、15億ドルの利益を出し、「イングランド銀行を潰した男」として知られる投資界での伝説的な人物です。そして世界中のトレーダーから憧れと尊敬を集めています。

 もちろん、私もそんな彼に例外なく憧れる投資家の端くれでした。

 そんな憧れのジョージ・ソロスの余りにも有名な格言でしたが、この時に初めて英語の原文を読んだのです。そして英文を前にして、少しですが高校時代に英語には自信のあった私は、この有名な格言「市場は常に間違っている」について、何と原文と翻訳とでは少し違うように取れてしまったのです。

 意味が違ってとれたのは「相場が間違っている」と言うあまりにも有名な箇所で、ソロスは「markets are always wrong」と言っているのではなく、「markets are always biased」つまり、「バイアスが掛かっている」と言っているからでした。

 「バイアスが掛かっている」と「間違っている」とでは、翻訳上では上手く行っているように思えますが、受け手の取り方としては似ているようで違いすぎます。そして「バイアス=偏り」と認識した私に体に専攻が走りました。

 「移動平均乖離率だ!!

「移動平均乖離率」で連戦連勝

 移動平均乖離率を簡単に説明すると、移動平均線からどれだけ離れているかを示すテクニカル分析に使われる1つの売買シグナルです。

(移動平均乖離率の例:GMOクリック証券提供) 移動平均乖離率画像

 この時、私が閃いた事はソロスが意図したかったものは、「相場には常にバイアスが掛かっている」とするならば、「市場は何処かでそのバイアスを解消する方向へと向かうはず」と言うものでした。

 そして、そのバイアスが掛かった状態を移動平均乖離率で発見し、バイアスが掛かった反対側へと逆張りする事で、「市場が正しい方向へと向かう際に稼げるのではないか?」と考えた訳です。

 もちろん、この時に初めて移動平均乖離率を知った訳でもなければ、使う事にした訳でも無いのですが、今にして思えば何をそんなにはしゃいでいたのか良く理解できませんが、私はソロスの意図を完全に読み取った気持ちになっていました。

 それもそのはず、それまでにはコツコツの利益を上げていた私でしたが、移動平均乖離率を導入した後の取引成績は鰻登りに上昇していき、資産が1ヶ月ほどで10倍まで膨れ上がっていました。

1日で消えていった利益

1日で消えていった利益

 そんな連戦連勝が続いていたある日、私はふと思いました。

 この時に思ったのが「こんなに勝てるのなら、もっとレバレッジをかけてやってやろう」と言う踏み越えてはいけない一線でした。

 連戦連勝だった私は既に天狗となっていて、取引1回分の金額を「資産が10倍となったのだから・・」と言う単純計算で10倍にまで引き上げました。簡単なリスクとリワードの考えを知っていれば、この決断が如何に馬鹿な決断だと直ぐに分かります。

 例えば、100万円の資金に対して10万円で運用しているのと、1000万円の利益に対して100万円で運用するのと、一見リスクは同じ様に思うのですが、実際にこれをやると中身が全く違ってきます。

 「負けるはずがない」と決め込んだ天狗の私がそこにいました。

 しかし、実際に10倍にした取引量で取引を始めると状況が一変しました。それまで含み損となる場合には10万・20万と刻んで行ってくれていたものが、一気に100万・200万となります。

 しかも、取引スタイルは完全なる逆張りです。勝てた取引においても一時的に含み損が生まれるのは避けられないと言ったスタイルです。

 取引に精神が付いていきませんでした・・。

 「金額で考えずにPIPSで考えろ」、こんな言葉は100も承知の上でしたが、それまでの取引とは1回の重圧が根本的に違う・・。金額が10倍になった事で、精神負担も同時に10倍になっていました。

 気が付くと、ストップまで我慢ができずに損切り、予定していた利益確定ラインまで持てずに早期利益確定。失敗取引の雨あられ。「権藤・権藤・雨・権藤」ではありませんが、「損切り・損切り・微益に損切り」と散々な1日となり、気が付けば1ヶ月の利益は何処へやら、全て市場へと戻してしまっていました。

 「3日天下の織田信長」そんな気分は一切ありません。「無念だ」の一言もでません。あるのは、もぬけの殻となった私の体と目の前に映るチャートだけ。

 誰かが言いました。「燃えた。燃え尽きた。灰も残らねぇ~」。

 遠くの方で「チーン」と言う強制決済のアラートが、ただ寂しく鳴り響いていました・・。

 「勝って兜の緒を締めよ」ではありませんが、私のような失敗をしないためにも、初心者の方はどうぞ、勝った時にこそ利益を守る取引にして頂ければと思います。

相場の格言と消えたお金のまとめ

 相場の格言と消えたお金についての簡単なまとめです。

  • ジョージ・ソロスの格言はやはり重みがあった。
  • テクニカル指標はハマル相場が来れば、怖いほど当たることがある。
  • 勝って兜の緒を締める。

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